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最高裁判所大法廷 昭和35年(ク)88号 決定 1961年12月13日

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告人青木義照の抗告理由について。

最高裁判所が抗告に関して裁判権をもつのは、訴訟法において特に最高裁判所に抗告を申し立てることを許した場合に限られ、民事事件については、民訴四一九条ノ二に定められている抗告のみが右の場合に当る。ところが、右抗告理由は、憲法違反をいうけれども実質は単なる法令違反の主張であつて、同条所定の抗告適法の理由とならない。

抗告代理人青木英一の抗告理由について。

所論は、要するに、「滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律」九条が、滞納処分に先立ち強制執行を続行すべき旨決定できると定めているのは、私債権を租税債権に優先させる点で公共の福祉に適合しないものであつて、憲法二九条二項違反の規定と認むべく、この規定の有効を前提とする原決定は違法であるというにある。

しかし、前記法律九条は、先行する滞納処分が差押の段階で停滞し財産の換価に至らない結果、強制執行の差押債権者の権利実現が不当に遅延するのを防止するため、同法八条各号のいずれかの事由があり且つ裁判所において関係徴収職員等の意見をきいた上、差押債権者の続行申請を相当と認めた場合に限つて、滞納処分に先立ち強制執行を続行する旨の決定ができると定めたものであるから、公共の福祉に適合し、憲法二九条二項に反するものではない。

よつて、本件抗告を理由なきものとして棄却し、抗告費用は抗告人の負担とすべきものとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 横田喜三郎 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 河村又介 裁判官 入江俊郎 裁判官 池田克 裁判官 垂水克己 裁判官 河村大助 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 奥野健一 裁判官 高橋潔 裁判官 高木常七 裁判官 石坂修一 裁判官 山田作之助 裁判官 五鬼上堅磐)

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